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Special * September 2008 Charles Tennyson-Turner |
THE SEASIDE
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海 辺
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Charles Tennyson-Turner (1808-79) Charles Tennyson-Turner については November 2005 を参照のこと。 季節はずれの海。日本もイギリスも、同じ雰囲気のようだ。 海辺のリゾート地で夏を過ごすことは18世紀後半から人気が出始め、19世紀に入ってさらに盛んになり、1840年代からは鉄道の普及によって大衆層にも爆発的に流行した。 ただし、今の海水浴場で見られるような女性の水着姿は、当時はなかった。人目を避けて、「水浴機械(bathing machine)」を使ったからである。水浴機械とは更衣室を兼ねた箱形の馬車で、中で着替えができ、馬に引かせて海に入ったところで、床に空いた穴から水につかるようになっていた。 この詩で、長い巻き毛をなびかせて歩く娘たちは、リゾート地の開放感を味わっていたのだろう。この頃、まっとうな大人の女性は常に髪をきちんと結っているものとされた。 街に戻って髪を結う彼女たちのイメージは、束の間の夏を忘れ去るセレモニーのようだ。 リゾート地の賑わいと寂れ方は潮の満ち引きに喩えやすいものだが、ここでは、季節はずれの海には満潮時にも干潮時にも誰もいない。そんな海辺を詩人はじっと見ていたのだろうか。 |