Monthly
Special * March 2008 William Blake |
THE ECHOING GREEN
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こだまヶ原
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William Blake
(1757-1827) William Blake については November 2000 を参照のこと。 Songs of Innocence に収められている。それぞれの連が一日の朝昼夕に対応すること、また、世代ごとの繰り返しが描かれていると見ることは、定説のようだ。繰り返されるから、「Echoing Green」なのだろう。 しかし、朝昼夕は人生の三段階に喩えられることが多いのに、ここでは人生の「朝=子供」と「夕=老人」しか登場しない。つまり、1連目が子供、2連目では子供と老人とが共存しているように見えるが、3連目になると場面が変わりまた子供だけしかいない。彼らの母親達は人生の昼に対応する年代だが、人としての存在ではなく、安心できる「母の膝」として登場するのみである。 老いると子供に帰るということなのだろうか。子供時分の想い出に浸る老人は、その間子供と同じ精神でいるということなのだろうか。ジョン爺は、子供達を見守り、昔を思いだして、老いの悲しみを吹き飛ばしている。 そんなことを考えながら何度も読んでいると、ふと、ラストにある無人の野原が現実なのであって、愉しい朝も子供達の遊ぶ姿も、老人の追想の中にだけ存在しているのではないかと思われてくる。 子供は、老人が記憶の中に眺める対象であると同時に、過去の老人その人でもあるのではないか。そうして、暗くなりゆく野原とは、老人の意識ではないのか。 あまりに明るく無邪気なふうを装い、ブレイクの「無垢の歌」は不思議なブキミさを秘めているように思う。 |