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Special * November 2007 William Butler Yeats |
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William Butler Yeats (1865-1939) W. B. Yeats については、April 2000 を参照のこと。 Troy: 古代ギリシア伝説から。Toroia、トロイア。トロイア戦争でギリシア軍に滅ぼされた。 「最も美しい女神に」と記された黄金のリンゴをめぐる3女神による争いをトロイア王子パリスが裁定することとなり、彼は「世界一の美女を与える」というアフロディテにリンゴを与えた。パリスはその美女すなわちスパルタ王妃を連れてトロイアに逃げた。 スパルタ王は全ギリシアから英雄を集め、王妃を取り戻すべくトロイアに攻め込んだ。トロイア城の攻防戦は10年に及び、両陣営とも多大な被害を出したのちにトロイアは滅びた。 この大惨事は、増えすぎた人間を整理するために仕組んだ大神ゼウスの策であった。 Usna: アイルランドの神話から。Usnach、ウシュナッハ。Ulster(アルスター)の若き勇士 Naoise(ニーシ、またはノイシュ)を長男とする3兄弟の父親。 破滅を招くという予言とともに生まれ、アルスター王の妻と定められて育った美少女Deirdre(デルドレー、またはディアドラ)は、ニーシと駆け落ちする。ニーシと弟たちは王の追っ手に殺され、デルドレーは王に捕らえられ、のちに自殺する。 ***** 「美」が不変かつ至高の理想であることは、多くの詩人が述べているところだ。しかし、Yeatsの場合は、美は神に特別扱いされる最高のものではあるが、人間がそれを手にすると不幸を招くような書き方をしている。 はかなく消える人間などが永遠の存在である美を求めるなど、身の程知らずだと言いたげに。それでも人間はそれを求めずにはいられないと嘆くようでもある。 トロイア戦争の始まりは、美女。しかしその前に、自分こそが最も美しいと認められたい女神たちの欲があった。ゼウスは「美」の破壊力をよく知っていて、それを人間リストラのシナリオに利用した。 デルドレーはその美貌ゆえに、3人の若者と自分とを滅ぼした。不吉な予言つきの赤ん坊を将来自分の妻にするつもりで育てさせたアルスター王は、「破滅を招く存在=美」であることを知っていて、彼女が美しく育つことを予見したのだろうか。 いずれにしても、美のおかげでひどい目に遭うのは、まずは男。古代の社会も男性中心だったことはもちろん、美女(それほどでもなくても)にひどい目にあった男が多かったことを想像させる。 |