Monthly
Special * April 2007 Thomas Moore |
AS SLOW OUR
SHIP As slow our
ship her foamy track |
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ゆっくりと船は
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Thomas Moore (1779-1852) Dublin 生まれ、Dublin 大学に入学、さらに Middle Temple で法学を学ぶ。1803年には Bermuda の海事裁判所記録係となるが、代理者にまかせ自らはイギリスに戻っている。 大学入学以前から詩集を発表し、1817年にはヨーロッパでも詩人として人気を得るほどだったが、音楽家でもあった。また Byron とは親しい友人であり、Moore はその伝記を書いてもいる。 人生の様々な節目で、また人生の終わりに、人は必ず振り返る。なじんだ土地を離れ、人と離れ、新たな環境で新たな生活を始めなくてはならないときが、確かにある。だから、去りがたい思いで足を踏み出すのだけれど。 「置いてきちゃったんだ」と感傷にふけるだけでなく、離れた後も繋がりを保つべく試してみたらどうだろう。もしそれが本当に離れがたいものであるなら。 そう考えると、ここに出てくる人々は「つらい別れを悲しむ自分」に陶酔しているようにも見える。もちろん、それは今現在の読者の感覚。メールも電話もなかった時代には、物理的に離れてしまったら永遠の別離ともなったのだ。 冒頭の船出のシーンについて: 帆船が追い風で進むときは、マストにつけたペナントは風下側つまり船の前の方になびく。船出した港を向いてペナントがはためくなら、その船は風に向かって進んでいることになる。"Against the wind"とあるのは、そのことに念を押しているようだ。 向かい風の場合、船は風に対してジグザグに進路を取り、少しずつ前進する。向かい風で出港することがあるかどうかは疑問だが、ここでは「人生」と重ね合わせているのだろう。 |