Monthly Special * September 2004
 Rudyard Kipling

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THE WAY THROUGH THE WOODS


They shut the road through the woods
  Seventy years ago.
Weather and rain have undone it again,
  And now you would never know
There was once a road through the woods
  Before they planted the trees.
It is underneath the coppice and heath,
  And the thin anemones.
  Only the keeper sees
That, where the ring-dove broods,
  And the badgers roll at ease,
There was once a road through the woods.

Yet, if you enter the woods
  Of a summer evening late,
When the night-air cools on the tout-ringed pools
  Where the otter whistles his mate,
(They fear not men in the woods,
  Because they see so few)
You will hear the beat of a horse's feet,
  And the swish of a skirt in the dew,
  Steadily cantering through
The misty solitudes,
  As though they perfectly knew
The old lost road through the woods . . .
But there is no road through the woods.

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森の道


人は 森の道を閉じた
  七十年前に。
風と雨とが 元にもどして、
  だから 今はもう わからない
人が木を植える前
  昔は森に道があったとは。
道は 雑木とヒースに埋もれて
  アネモネがちらほら。
  猟番だけにわかる
森鳩が巣ごもり
  穴熊がゆるりところがるところに
昔は森の道があったのだと。

けれど、夏の夜更けて
  森に入れば、
川獺が連れ合いを呼び
  (森では人をおそれない、
めったに見かけぬものだから)
  鱒が波紋を広げる池に 夜気の冷えるころ、
聞こえるでしょう、馬の蹄のリズムと
  鞍のあおりの露払う音が、
  もやの中 わびしい森を
ゆっくりと駆けていく、
  まるで ちゃんと知っているかのように
失われた昔の森の道を・ ・ ・
けれど、森に 道はない。

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Rudyard Kipling (1865-1936)

Kipling については、2002 January を参照のこと。さらに詳しくは、GANESA へ。

Rewards and Fairies (1910), 'Marklake Witches' の章頭詩。Rewards and Fairies は、Puck of Pook's Hill (1906) の続編。『丘の民』である Puck が過去の人物を呼びだして、イングランドの歴史を Dan と Una 兄妹に聞かせる。教科書的な歴史ではなく、ある時代や出来事が個人の体験を通して描かれる。


何か不思議な静けさの感じられる詩。人がいなくなると、自然は驚くほど速く人の痕跡を消してしまう。そこに入っていくとしたら、少し恐いのではないかと思う。
野生動物に襲われる心配ではなく、自然の力がひしひしと感じられるだろうから。そこに長く留まっていると、自分も同じように消えてしまうのではないか――。


山間の道路を通ると、トンネルや橋の付近に古い道が見つかることが多い。通行止めのバリケードさえ朽ちかけ、その向こうに見える道路は、たった数年でアスファルトが割れて崩れ、草や低木がさかんに生えている。かすかに見えるセンターラインのペイント。路肩は崩れ落ち、山側には土石が積もって、かつてはトラックも行き違っていたはずの道が、極端な細道になっている。

一瞬見えるそんな道に感じるのは、自然の力のすごさと人間の営みの無常。なにかロマンティックでもある。



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