MONTHLY
SPECIAL * December 2003 (2) Charles Dickens |
|
|
Charles
Dickens (1812-1860) Dickens については Christmas Issue 2000 を参照のこと。 有名なクリスマスブックスの同名の小説ではなく、The Pickwick Papers 中の挿入歌(第28章)である。イブの夜、陽気な老紳士 Mr. Wardle が、クリスマスの到来を祝して歌う。その親類友人使用人がそろったパーティーで、主人公 Mr. Pickwick とその友人たちも客として楽しんでいる。 この詩は季節をそれぞれ人間にたとえ、クリスマスが一番だと締めくくる。深い意味があるわけではなく、調子の良い言葉とリズムでクリスマスを讃える歌である。奇数行で行間韻を踏んでいる。 The Pickwick Papers (1836-37) は、Dickens の小説第1号にして彼の出世作である。それまでに発表していたスケッチに使ったペンネーム『Boz』の名で分冊出版された。当初の企画では有名な画家 Seymour の絵に添える文章を書くことになっていた。スケッチふう短編で評価されてはいたものの、Dickens もまだ駆け出しの作家だったのである。 ところが第2分冊が出版される前に Seymour が急死し、その仕事は若い Browne (Phiz) に引き継がれた。それで企画の主導権は Dickens に移り、彼の彼らしさが発揮されるようになった結果だろう、第5分冊からは熱狂的にうけるようになった。 『ピクウィック・クラブ』に宛てた Mr. Pickwick 一行の旅行見聞報告という体裁になっている。(善良な独身紳士 Mr. Pickwick は引退した実業家で、このクラブの会長である。) 彼らは行く先々で珍事件に巻き込まれ、それが笑いの元でもある。(もっとも、今の基準からすれば、彼らの『冒険』も『笑い』もテンポが遅く感じられるだろう。) また、一行が旅する田舎の風景は古き良きイギリスの幸福感に満ちている。 その全体としてユーモラスで明るい雰囲気の中に、暗い短編物語が数編挿入されている。異常な心理が描かれたり陰惨な展開であったりするものがほとんどで、まるで本編の陽気さとバランスを取るかのようである。しかしこれらの短編の方が読んで面白いと思うのは、異文化のユーモアを解することは難しいということだろうか。 上記の短編のうち4編が『ディケンズ短編集』(岩波文庫)に収められています。 |