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Special * June 2002 William Butler Yeats |
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William Butler Yeats (1865 - 1939) Yeats については April 2000 を参照のこと。 Danaan (ダナーン族、ダーナ神族) Yeats によれば: Danaan とは『女神 Dana の種族』を意味し、Dana は古代アイルランドのあらゆる神々の母。Danaan は光・生・暖かさの力であり、彼らは夜・死・冷たさの力である Fomoroh (フォモール族)と闘った。しかし供物も栄誉も捧げられなくなり、彼らは人々の想像の世界で次第に縮小して、ついには妖精となった。 Danaan shore (ダナーンの浜) ダナーン族の住む楽園、妖精の島。そこに行けば、人間も永遠の青春が得られるという。 この『白い鳥』は、ダナーン族の化身で、妖精の国に住むものとされる。ケルトの神話や伝説には、白い鳥に姿を変えられた人間もしばしば登場する。しかし、この詩にあるのは単なる<非現実への憧れ>ではないだろう。 Yeats はロマン主義的な詩人として出発、その後心霊学に興味を持ち、また、オカルティズムの結社『黄金の暁教団』に参入した。しかし、社会的現実に背を向けたわけではない。彼は自ら中心となって1899年にアイルランド国民文学座を設立、1904年にはアベイ座を手に入れて本拠地とし、その運営に力を尽くした。 そのように見るなら、『白い鳥』の住む妖精の国とはアイルランド文化そのものであり、『薔薇』はイングランド、『百合』はフランス(の文化)。『消えゆく流星の輝き』は世紀末の文芸、『低くかかって残る 青星の輝き』はヴィクトリア朝時代の文化のこと――と考えるのは、<常識的>すぎるだろうか。(この詩は1892年に書かれた。) おだやかな海は泡立たない。荒れているか、磯に波が打ちつけるか。(洗剤などが流れ込んでいるのは論外。) 泡立つ海は美しいけれど、そこは波乱に富んだ場所でもある。Yeats の思い描く海がそうであるなら、『白い鳥』は、ただぼんやりと浮かんでいることはできないだろう。 |