MONTHLY
SPECIAL * October 2001 Oscar Wilde |
The Disciple
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散 文 詩
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Oscar Wilde (1854-1900) [Oscar Fingal O'Flahertie
Wills Wilde] アイルランドのダブリンに生まれる。オックスフォード大学モードレンカレッジを卒業。詩・劇・小説の分野で、機知に富んだ作品を発表した。 1895年、まさに文壇の中心的存在となっていた彼は、同性愛行為の罪で2年間の重労働を含む懲役に服す。出所後は社会に受け入れられず、破産したうえ妻子にも去られ、単身ヨーロッパ大陸に渡り、1900年、パリで死亡。 "Disciple" は、Poems in Prose『散文詩』として1894年にまとめて発表された6編のうちの1つである。ナルキッソス伝説のパロディだが、そこにあるのはそれぞれの虚栄心であったという意地悪な『真理』が、いかにも 世紀末の反逆者 Wilde らしい。 ――ナルキッソス伝説 おしゃべりなニンフのエコーは、夫ゼウスを探しに来たヘラの怒りをかい、誰かに話された言葉を繰り返すことしかできなくなった。 エコーは美少年ナルキッソスに恋をして近づくが、会話が成り立たない。ナルキッソスはエコーから逃げた。絶望のあまり痩せ細ったエコーは肉体を失い、声だけの存在になってしまった。これが『やまびこ』である。 ナルキッソスは他の乙女たちにも冷淡だった。ある乙女の願いを聞き届け、復讐の神は罰を与えた。彼は水に映る自分の姿に恋をする。手を伸ばせば、涙を落とせば、水面が揺れて『恋人』の姿は消える。情熱的な眼差しで自分を見つめてくれるのに、何も語りかけてはくれない。 実らぬ恋にナルキッソスは憔悴し、やがて死んでスイセンの花に姿を変えた。だからスイセンは水辺で自分の姿を水に映しているのである。 この話のスイセンは、白花で副花冠(中央のカップ型の部分)に紅色が入るクチベニスイセンだといわれる。 |