Monthly Special * October 2008
 Charles Tennyson-Turner

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WIND ON THE CORN


Full often as I rove by path or stile,
To watch the harvest ripening in the vale,
Slowly and sweetly, like a growing smile--
A smile that ends in laughter--the quick gale
Upon the breadths of gold-green wheat descends;
While still the swallow, with unbaffled grace,
About his viewless quarry dips and bends--
And all the fine excitement of the chase
Lies in the hunter's beauty: In the eclipse
Of that brief shadow, how the barley's beard
Tilts at the passing gloom, and wild-rose dips
Among the white-tops in the ditches rear'd:
And hedgerow's flowery breast of lacework stirs
Faintly in that full wind that rocks the outstanding firs.



*****


麦畑の風


いつもいつも あちこちと小道を歩き 柵を越え、
眺めている、実りが谷間で熟していくのを
ゆっくりと やさしく、微笑みが大きくなっていくみたいだ――
ついには破顔となる微笑―― 一陣の風が
吹き下りる、金色緑の麦の広がりに。
それでもなお うろたえることもなく優雅に、ツバメは
舞い降り 輪を描く 目に見えぬ獲物を追って――
この狩りの見どころは ひとえに
狩り手の美しさにある。
そのつかの間の影の中で、
大麦が 移ろう陰に芒<のぎ>を傾け、野薔薇は頭を垂れるよ、
溝に伸びる白穂の中に。
生け垣は 花咲く胸のレース飾りを微かに揺らす
そびえ立つ樅の木を揺さぶる風の中で。



Charles Tennyson-Turner (1808-79)

Charles Tennyson-Turner については November 2005 を参照のこと。


秋の田園風景を、細やかに描く。実りは、自然の女神の微笑み。女神のご機嫌うるわしく、微笑みは満足の笑いになりそうだ・・・と思いつつ眺めていると、大笑いのような風が吹いてくる。

ツバメも実りの秋に恩恵を受けている。南の国へ帰るために虫を食べ体力を蓄えているのだろう。その狩りは真剣勝負だが、様子は優雅だ。

beard 「芒」は、麦などの穂にチクチクと生えているヒゲのこと。ここでは大麦の穂をさしている。

大風は堂々としたモミの木を揺らす。しかし、同じ風にも、華奢な生け垣は表面をヒラヒラとさせるだけ。そんな素朴な観察が、秋の風景を構成している。

ラストから3行目の white-tops は、雑草の種子が白い綿毛のような穂になっていると推測した。



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