Monthly Special * November 2005
 Charles Tennyson-Turner

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TO A SCARECROW, OR MALKIN, LEFT LONG
AFTER HARVEST


Poor malkin, why hast thou been left behind?
The wains long since have carted off the sheaves,
And keen October, with his whistling wind,
Snaps all the footstalks of the crisping leaves;
Methinks thou art now wholly make-believe;
Thy posture, hat, and coat, are human still;
Could'st thou but push a hand from out thy sleeve!
Or smile on me! but ah! thy face is nil!
The stubbles darken round thee, lonely one!
And man has left thee, all this dreary term,
No mate beside thee--far from social joy;
As some poor clerk survives his ruin'd firm,
And, in a napless hat, without employ,
Stands, in the autumn of his life, alone.





案山子



あわれな案山子、キミは なぜ取り残されているのかな。
荷車はとっくの昔に麦束を運んでしまったし、
きつい十月が ひゅうひゅう風を鳴らして
カサカサの葉を みんな付け根からちぎっていく。
キミがまったく作り物だとは 僕には思えない。
ポーズも、帽子も、服も、やっぱり人間っぽいよ。
せめてその袖から にゅっと手が出たら!
僕ににっこりしてくれたら! でも、キミには顔がないんだ。
キミのまわりで切株が黒ずんでいく。 孤独なヤツ。
人はキミを置いてきぼりにした、この侘びしい季節に。
連れもなく――つきあいの楽しみなんて、さらさらなくて。
会社がつぶれて残された あわれなサラリーマンが
すり切れた帽子をかぶって 職もないまま
立っているみたいだね、人生の秋、たった独りで。





Charles Tennyson-Turner (1808-79)

Alfred Tennyson の兄。1827年に Alfred とともに詩集 Poems of Two Brothers を出した。ケンブリッジ大学トリニティーカレッジを卒業後、司祭となる。1836年に結婚した妻は、後にAlfredの妻となる女性の姉妹であった。ほぼ生涯にわたってリンカンシャーの辺鄙な村で司祭として過ごした。

Charles Tennyson-Turner の作品には Alfred に通じる叙情的資質と哀愁が感じられるといわれる。また、そのソネットには19世紀中頃のいなかの教区生活がよく表現されているとされる。


道すがらふと見かけた光景、収穫がとっくに済んだ畑にぽつんと取り残された案山子。人に似せて作られているためだけでなく、そのうち捨てられて孤独な様子がどこか人間っぽい。いつの時代、どこであっても、共通してわかる心情だと思う。



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