Monthly Special * May 2008
 W. H. Davies

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THE EAST IN GOLD


Somehow this world is wonderful at times,
As it has been from early morn in May;
Since I first heard the cock-a-doodle-do,
Timekeeper on green farms--at break of day.

Soon after that I heard ten thousand birds,
Which made me think an angel brought a bin
Of golden grain, and none was scattered yet--
To rouse those birds to make that merry din.

I could not sleep again, for such wild cries,
And went out early into their green world;
And then I saw what set their little tongues
To scream for joy--they saw the East in gold.



*****


黄金の東空


なぜか時々 この世界はすごい、
5月のある朝早くも そうだった。
最初に コケコッコーが聞こえた、
緑の農場の時計係だ――それが夜明け。

そのあとすぐに 一万羽の小鳥の声、
それで僕は思った、天使がカゴに一杯
黄金の麦を入れてきたけど、まだまいてないんだ――
鳥たちがあんなに浮かれて騒ぐのは。

もう眠れない、こんな囀りの嵐では、
だから 早いけど鳥たちのいる緑の世界に出た。
それでわかった 小さな喉で
喜び叫んでいたわけが――黄金の東方を見たんだ。



William Henry Davies (1871-1940)

W. H. Davies については、April 2006 を参照のこと。


自然の美しさは、人間が見て「美しい」と感じるために美しいのではない。たとえばコウテイペンギンのヒナの愛らしい外見は、人間を喜ばせるためではなく、進化と適応によりたどり着いた生存に最適な姿なのであって、人間が彼らを発見する何万年も前から変わっていない。

そしてまた、人間の誰もが同じように自然を美しいと感じるわけではない。文化により異なり、時代により変化してきた。イギリス絵画で自然の美が「発見」されるのは、19世紀に入ってからではなかったか。

さらに、同じ光景を見ても、個人個人が持っているものによっても、感動の程度や種類が異なる。

この詩で小鳥が見て囀り騒いでいるとされる「the East」は、ただ単に「東の空」ではないだろう。黄金伝説のある「東方」や、イエス誕生の時に訪れた三博士の住む「東方」といった、有難い世界をイメージしている。

そうした背景が心にあるので、黄金の朝雲が、ただ色がきれいな以上に美しく見えたのだろう。



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