Monthly Special * April 2006
 William Henry Davies

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THE KINGFISHER


It was the Rainbow gave thee birth,
  And left thee all her lovely hues;
And, as her mother's name was Tears,
  So runs it in thy blood to choose
For haunts the lonely pools, and keep
In company with trees that weep.

Go you and, with such glorious hues,
  Live with proud Peacocks in green parks,
On lawns as smooth as shining glass,
  Let every feather show its mark;
Get thee on boughs and clap thy wings
Before the windows of proud kings.

Nay, lovely Bird, thou art not vain;
  Thou hast no proud ambitious mind;
I also love a quiet place
  That's green, away from all mankind;
A lonely pool, and let a tree
Sigh with her bosom over me.




*****



翡 翠



君を生んだのは『虹』、
  その美しい色を余さず君に残した。
『虹』の母の名は『涙』、
  君はその血を受け継ぎ
寂しい池を住処に選ぶ、
連れはいつも、泣くような柳。

さあ行って、その美しい色の装いで、
  緑の園で 誇らし気な孔雀とともに過ごせ、
光る硝子ほどにも滑らかな芝生に、
  羽のどの一枚も くっきりと映えるよう。
大枝に止まり 羽ばたけ
誇り高き王たちの窓辺で。

いいや、美しい鳥よ、君はひけらかす性格<たち>じゃない。
  君には思い上がった野心などない。
私も静かな場所が好きだ
  緑にあふれ、人の世から隔たった。
寂しい池、その懐に私を抱き
樹はため息をつくままに。



*****


William Henry Davies (1871-1940)


放浪生活を送った後、34才のときに詩人となった。詩集は死後、1943年に出版された。散文作品 The autobiography of a Super-tranp (1908) に、その人生の一部が窺われるという。

古くから親しまれたカワセミは、ブルーの背に濃いオレンジ色の腹で、目や耳のあたりにもオレンジ色の羽がある美しい鳥。川や池の近く棲む種類がよく知られるが、草原や森林に棲息する種もある。

ギリシア神話では、海で死んだ夫の元へ妻がこの鳥になって駆けつけ、その夫も神の情けによって同じ鳥に姿を変えられたという。

カワセミの漢字表記『翡翠』は宝石のヒスイと同じで、『翡』はオスの、『翠』はメスのカワセミを表すのだそうだ。



自然の造形には、人間の目など全く関係なく決まったはずなのに、人間にとって美しいと感じられるものが数多くある。とくに鳥の色や装飾は、生存上の必然性をこえてデザインされたかのようで不思議なことが多い。

しかし、その生き物自身は、自分の外見ゆえに「proud」になるだろうか。たとえば庭園に飼われた孔雀が高慢そうに見えるのは、人間の心の投影ではないだろうか。あんなに美しく豪華な装いをしているなら。金貨を積んででも求められるなら。人間なら、それできっと高慢になるだろう。

あるいは、「孔雀は高慢」という表現が記憶に刷り込まれていて、そのつもりで見るからそう見えることもあるのではないか。

この詩では、自然そのものも人間の心というフィルターを通して描かれている。Davies にとって、自然は「女性」なのだ。これは昔からの「Nature = 自然の女神」というとらえ方と同じだが、Davies の自然は祖母・母と続く。その子供であるカワセミもやはり娘なのだろう。

さらに、深く繁って張り出した木の枝は「胸」で、その下にうずくまる詩人はまるで母親の胸の下で膝にやすらぐ幼児となる。あるいは、恋人の胸に抱かれるイメージ。

それにしても、ラストの光景で、カワセミの居所がない。主役ではなかったのだろうか?



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