Monthly Special * April 2008
 Robert Browning

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LOVE IN A LIFE



Room after room,
I hunt the house through
We inhabit together.
Heart, fear nothing, for, heart, thou shalt find her--
Next time, herself!--not the trouble behind her
Left in the curtain, the couch's perfume!
As she brush'd it, the cornice-wreath blossom'd anew:
Yon looking-glass gleamed at the wave of her feather.

Yet the day wears,
And door succeeds door;
I try the fresh fortune--
Range the wide house from the wing to the centre.
Still the same chance! she goes out as I enter.
Spend my whole day in the quest,--who cares?
But 'tis twilight, you see,--with such suites to explore,
Such closets to search, such alcoves to importune!



*****


人生における愛



部屋また部屋と
屋敷中を探す
二人がともに住まう屋敷を。
心よ、案ずるな、心よ、必ず見つかるー――
この次は、あのひと自身が!――去った後の
カーテンの揺れや、カウチの残り香ではなくて!
あのひとが触れて通ったのだ、コーニスのリースが再び花開いた。
向こうの鏡はあのひとのドレスの波に輝いた。

しかし日は暮れゆく、
しかもドアまたドア。
新たな運だめし――
広い屋敷をくまなく歩く、ウィングからメインの棟まで。
それでも同じすれ違い! 私が入ればあの人は出ていく。
まる一日を探してすごす、――かまうものか。
だが、ほら、もう黄昏――探るべき部屋はこんなにあるというのに、
捜すべきクローゼットも、覗くべきアルコーブも、こんなに。




Robert Browning (1812-89)

Robert Browning については
February 2002 を参照のこと。


同じ屋敷に住んでいながらすれ違いばかりで顔を合わせることがない彼女を、ただひたすら追い求める男。この広い屋敷とは、もちろん世間のこと。

会ったことがあるのか、ないのか。そもそも、自分が捜している相手が誰なのか、わかっているのか。いざ廊下で鉢合わせしたとしたら、「ただのメイド」と、無視するのではないのか。そもそも、残された気配は、同一人物のものなのか。

端から端までくまなく捜すこの男の執拗さは、一方的な空回り状態を感じさせないだろうか。それに、屋敷(=世間)にいるであろう他の人間が全く目に入らないのも、かなり危ないところに来ているようだ。

もっとも、一途に想いを寄せる人間の精神状態はそれに近いものだろう。第三者が客観的に眺めれば、滑稽であったりする。

この "Love in a Life" には "Life in a Love" という続編があり、そこではこの男は完全に「来て」しまっている。



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