Monthly Special * July 2007
 Dante Gbriel Rossetti

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SILENT NOON


Your hands lie open in the long fresh grass,--
  The finger-points look through like rosy blooms:
  Your eyes smile peace. The pasture gleams and glooms
'Neath billowing skies that scatter and amass.
All round our nest, far as the eye can pass,
  Are golden kingcup-fields with silver edge
  Where the cow-parsley skirts the hawthorn-hedge.
'T is visible silence, still as the hour-glass.

Deep in the sun-searched growths the dragon-fly
Hangs like a blue thread loosened from the sky:--
  So this wing'd hour is dropt to us from above.
Oh! clasp we to our hearts, for deathless dower,
This close-companioned inarticulate hour
  When twofold silence was the song of love.




*****



静かな真昼



君の両手は 指を開いて 長い若草に埋もれている、――
   草ごしの指先が バラの蕾に見える。
   君の目は おだやかに微笑む。草原は輝き、翳り、
散っては群がるうねり雲の下で。
僕たちだけの場所、あたりは見わたすかぎり
   金色キンポウゲの野原、銀色の境まで
   サンザシの生け垣 シャクが縁取るところまで。
目に見える沈黙、砂時計のように 音もなく。

日の射す茂みの奥に トンボが
ぶら下がって 空から落ちてきた青い糸みたいだ。――
   それなら、この翼ある時間も 空から降ってきたもの。
ほら、僕たちの心につなぎ止めるよ、生あるうちの形見に、
このぴったりと寄り添った 言葉のない時間を、
   二重の沈黙が愛の歌だった時間を。




*****



Dante Gabriel Rossetti (1828-82)

Rossetti については March 2000 を参照のこと。


夏の真昼、輝く草地に腰を下ろす二人。イギリスの夏は日本ほど厳しくない。だから、日差しの下は「暑い」ではなくて「静か」だと言っていられる。

ラストの「二重の沈黙」は、環境の静けさと、その中で黙って寄り添う二人の沈黙。愛する二人の、満ち足りた時間。

実際にはいろんな音がしているだろう。鳥が鳴いたり、草がサラサラ音を立てたり。けれど、そうした音がさらに静けさを引き立てる。だから、目に見える景色全体が「沈黙」。

この二人が一緒に歳をとり、いつか思い出すことはあるだろうか、空から降ってきた「翼のある時間」が二人の心に止まった瞬間を。


シャクはセリ科の多年草で、まっすぐな茎は1メートルほどになり、上部で枝分かれする。葉は全体が三角形の羽状。茎のてっぺんにセリに似た形の白い花をつける。

サンザシも白い花をつける。垣根によく利用されるが、セイヨウサンザシは悪臭があるらしい。遠くから眺めていると花は銀色に見えるのだけれど。



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