MONTHLY SPECIAL * March 2000
 Dante Gabriel Rossetti

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Sudden Light

I have been here before,
  But when or how I cannot tell:
 I know the grass beyond the door,
  The sweet keen smell,
The sighing sound, the lights around the shore.

 You have been mine before, --
  How long ago I may not know:
 But just when at that swallow's soar
  Your neck turned so,
Some veil did fall, -- I knew it all of yore.

 Then, now, -- perchance again! . . .
  O round mine eyes your tresses shake!
 Shall we not lie as we have lain
  Thus for Love's sake,
And sleep, and wake, yet never break the chain?

 

*****

 

予期せぬ光

ぼくは まえに ここに来たことがある、
いつだったか どうやってだか わからないけれど。
ドアのむこうに草原
(くさはら)があったのを おぼえている、
甘く はっきりとした香り、
さやさやと風の音がして、岸辺には明かりが。

きみは まえには ぼくのものだった、−−−
どれくらいまえのことだか わからないけれど。
でも、あの時ツバメが空
(くう)をよぎり
きみが 首をむこうに向けて、その時、
なにかベールがおりた、−−−それはとっくの昔にわかっている。

こうして、今夜、−−−もしかしたら また!・ ・ ・
ああ、ぼくの眼のあたりで きみの髪がゆれる!
むかし そうしていたように
ぼくたちが 愛のために横たわることは もうないのだろうか、
眠って、そして目覚めて、それでも二人の絆は切れることなく。

 

*****

 

Dante Gabriel Rossetti (1828-82)

イギリス絵画における「ラファエロ前派」 (The Pre-Raphaelites) の画家として有名。 ザクロを手にした「プロセルピナ」Proserpine に代表される、ロセッティ独特の雰囲気を持った女性像は、日本でも多くのファンを獲得している。

ラファエロ前派の美術家たちはラファエロよりも前の時代の<清純な>絵画を理想としたのだが、ロセッティの詩は<官能的>であるといわれる。

<お上品>な Victoria 朝時代(19世紀)当時には、あからさまに "the fleshly school of poetry" (肉欲派、官能派)と呼んでロセッティの詩を酷評した批評家もいた。

この詩に出てくる "veil" は、自分が愛した女性を自分から隔てたもの(死? 心変わり?)と考えられ、全体としては、彼女が現れた夢か幻を表現している。

このページの背景は、 William Morris (1834-96) デザインの壁紙「アカンサス」Acanthus 。 モリスはラファエロ前派と共に活動した。 画家・文人・社会運動家など多彩な面を持つが、現在では美術工芸家として評価が高い。 (Proserpine のモデルはモリス夫人で、ロセッティは彼女を愛した。)

 

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