Monthly Special * February 2007
 W. H. Davies

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THE HOUR OF MAGIC


This is the hour of magic, when the Moon
   With her bright wand has charmed the tallest tree
To stand stone still with all his million leaves!
   I feel around me things I cannot see;
I hold my breath, as Nature holds her own.
   And do the mice and birds, the horse and cow,
Sleepless in this deep silence, so intense,
   Believe a miracle has happened now,
And wait to hear a sound they'll recognize,
To prove they still have life with earthly ties?



*****



魔法の時間


魔法の時間だ、月が
   輝く魔法の杖で 高い高い木に命じた
立ちながら動かぬ石になれ 数知れぬその葉もろとも!
   あたりには目に見えぬものの気配、
息を潜める、自然の女神に倣い。
   ねずみも鳥も、馬も牛も、
これほど深くて濃い静けさに 眠りもできず、
   信じているのだろうか、今 一つの奇跡が起こったと、
待っているのだろうか、耳に聞こえる音がするのを、
まだこの世に繋がる命の 証にしたくて。




William Henry Davies (1871-1940)

W. H. Davies については、April 2006 を参照のこと。


風もなく穏やかな夜、煌々と照る月。その光の下では、ほんとうにあらゆるものが石のように静まりかえって見える。

あまりに静かなので、自分が生きているのかどうかも疑わしくなる。動物も物音ひとつたてない。けれど、「耳に聞こえる音」を待っているのは、動物たちではなく、もちろん詩人だ。

そんなふうに感じるのが、月の光の「魔法」がなせる業。昔から(英語圏では)月の光にうたれると狂うという。

もしかしたら、必ずしも精神に異常を来すの意味ではなく、神秘的な光景に出会って何か極度に芸術的な心持ちになってしまった人のことをも指したのかもしれない。それは、日の光の下での常識や利益とは別の世界に属することだから。

ところで、英語圏では「満月」には「滑稽」なイメージがあると聞きましたが、いかがでしょう?



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