Monthly Special * June 2006
 Coventry Patmore

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NIGHT AND SLEEP


I
How strange at night to wake
  And watch, while others sleep,
Till sight and hearing ache
  For objects that may keep
The awful inner sense
  Unroused, lest it should mark
The life that haunts the emptiness
  And horror of the dark!

II
How strange at night the bay
  Of dogs, how wild the note
Of cocks that scream for day,
  In homesteads far remote;
How strange and wild to hear
  The old and crumbling tower,
Amid the darkness, suddenly
  Take tongue and speak the hour!

III
Albeit the love-sick brain
  Affects the dreary moon,
Ill things alone refrain
  From life's nocturnal swoon:
Men melancholy mad,
  Beasts ravenous and sly,
The robber, and the murderer,
  Remorse, with lidless eye.

IV
The nightingale is gay,
  For she can vanquish night;
Dreaming, she sings of day
  Notes that make darkness bright;
But when the refluent gloom
  Saddens the gaps of song,
Men charge on her the dolefulness,
  And call her crazed with wrong.




*****



夜と眠り


I
何とも奇妙だ 夜目覚めて
  じっと待つのは、他人が眠っている間、
目も耳も 痛くなるまで
  内なる恐るべき意識が
飛び立たぬよう
  無と闇の恐怖に棲む生の
<しるし>とならぬようにと
  何かを待つのは!

II
何とも奇妙だ 夜吠える
  犬は、何とも凄まじいものだ
夜明けを求め叫ぶ 雄鳥も、
  ずっと遠い農家なのに。
何とも奇妙で凄まじいものだ
  崩れそうな古塔が
闇のただ中、突然に
  舌を得て恐怖を語るのは!

III
恋を煩う頭は
  陰気な月を贔屓にするが、
邪なものどもだけが避けるのだ
  生の 夜ごとの無意識を。
憂鬱な男は狂い、
  獣は餓え 狡猾、
盗人に人殺しは
  後悔、瞬きもせず。

IV
夜鳴鶯は陽気
  夜など ものともしない。
夢を見ながら 昼を歌う
  闇をも輝かせる歌を。
だが暗闇が押し戻り
  歌の切れ目を翳らせると、
人は その侘びしさを夜鳴鶯のせいにする、
  邪ごとに憑かれた鳥だと。



*****


Coventry Patmore (1823-96)


Coventry Patmore については、March 2006 を参照のこと。

19世紀には、夜はまだ本当に『夜』であり、人間の領域ではなかったのだろう。眠ってしまうこと、何も見ないこと。まっとうな人はそうして夜を過ごす。

けれど、ふと目覚めてしまうと、普段は意識の底にあった何かが膨らんで・・・。そんな恐怖。何でもない物音が悪夢のように感じられる、そんな恐怖。夢の中身を目覚めた状態で見てしまうからなのだろうか。

そう思いながらもう一度見てみると、タイトルは "Night and Sleep" なのに、 "Sleep" 「眠り」は出てこない。目覚めてしまった人、起きているもの、眠らない人間たち。ナイチンゲールの歌声を聞いて云々する人も、やはり眠ってはいない。

ナイチンゲールだけは、「夢を見ながら」歌っている。眠っているのだから、生き物にとって恐ろしいはずの夜も怖くはないはずだ。夜起きてナイチンゲールの囀りを聞く人々には、そう感じられるのだろう。

そうして人は、夜の侘びしさをナイチンゲールのせいにする。起きていないで眠ればよいのに。

全体としてこの詩は、不可解な夢のような印象を与える。何かをしているつもりでいて、ふと気づくとそれが別のことにすり替わってしまっており、そこで目が覚める――そんな夢を見ることはありませんか?



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