Monthly Special * March 2006
 Coventry Patmore

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THE TOYS


My little Son, who look'd from thoughtful eyes
And moved and spoke in quiet grown-up wise,
Having my law the seventh time disobey'd,
I struck him, and dismiss'd
With hard words and unkiss'd,
His Mother, who was patient, being dead.
Then, fearing lest his grief should hinder sleep,
I visited his bed,
But found him slumbering deep,
With darken'd eyelids, and their lashes yet
From his late sobbing wet.
And I, with moan,
Kissing away his tears, left others of my own;
For, on a table drawn beside his head,
He had put, within his reach,
A box of counters and a red-vein'd stone,
A piece of glass abraded by the beach
An six or seven shells,
A bottle with bluebells
And two French copper coins, ranged there with
    careful art,
To comfort his sad heart.
So when that night I pray'd
To God, I wept, and said:
Ah, when at last we lie with tranced breath,
Not vexing Thee in death,
And Thou rememberest of what toys
We made our joys,
How weakly understood,
Thy great commanded good,
Then, fatherly not less
Than I whom Thou hast moulded from the clay,
Thou'lt leave Thy wrath, and say,
'I will be sorry for their childishness.'




*****



玩 具



息子よ、もの思いするような目で
静かに大人びてふるまい口をきく息子よ、
私の言いつけに七度目にそむいたとき
私はお前を打って、去らせた
きつい言葉で、キスもせぬまま、
お前の母は、やさしかったが、すでに亡い。
だから、悲しくて眠れぬのではと
寝床をのぞいたら、
ぐっすりと眠っていた、
黒ずんだまぶた、まつげは まだぬれている
さっきまで泣いていたのだ。
私は、声をもらし、
その涙をキスで払い、自分の涙は拭わぬまま。
顔近くに引き寄せたテーブル、
手の届くところには、
得点コインが1箱と 赤縞模様の石、
浜で磨かれたガラスのかけらに
貝殻 六つ七つ、
ブルーベルを挿した瓶
それからフランス銅貨が二つ、ていねいに
ならべてあった、
哀しむ心をなぐさめようと。
だから その夜 神に祈りをささげるときに
私は泣いて、こう言った。
我々が 死に際して御手をわずらわせることなく
ついに恍惚の息で横たわるとき、
どんな玩具を我々は喜びとしたか、
またあなたから命じられた大いなる善を
我々がいかにおぼろげにしか解さなかったか
お思い出しになるとしても、
あなたが土からお造りになった私がそうであるように、
父親らしく
どうか 怒りは置いて、こう言われますよう、
「あれらの幼さを 残念に思う」と。



*****


Coventry Patmore (1823-96)


大英博物館図書館に勤務。Tennyson や Ruskin の友人であり、ラファエロ前派のメンバーとも交際するようになり、その機関誌 The Germ に作品を発表した。(機関誌は第3号から Art and Poetry にタイトル変更、合計4回発行された。)

初期の作品集 The Angel in the House では結婚と家庭生活の幸福を称えたが、その妻は 1862年に死亡。1877年に出版されたのが、The Unknown Eros で、妻を失った悲しみとともに、より高い人間性が表現されているといわれる。

Patmore はその後2回再婚、晩年は裕福な地主として悠々自適の生活を送った。


'The Toys' はThe Unknown Eros に収められた作品で、息子に対する父親の愛情と、男手ひとつで子供を育てることの難しさに戸惑う気持ちとが伝わってくる。

妻を失った夫と母を失った子のエピソードを描いているけれど、そこから[子供と父親の関係]は[人間と神の関係]の相似形であることを思うところが、私たちの感覚とは異なる。しかしその神はなにか日常的な感覚で捉えられて、やさしい雰囲気が感じられる。



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