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THE COUNTESS KATHLEEN O'SHEA

キャスリーン・オシェイ伯爵夫人



たいへんに昔のこと、古きアイルランドに見知らぬ商人が二人、突然現れた。誰もこの二人の名を聞いたことがなかったが、彼らはアイルランドの言葉をまったく申し分なく話した。髪は黒く、金の飾りで束ねて、衣服はまれに見る豪華なものであった。

二人とも同じ年頃で五十歳くらいか、というのは、額にしわが寄り顎髭には白いものが混じっていたからだ。

この立派な商人たちが着いた宿屋ではその目的を見抜く試みがなされたのだが、無駄だった。彼らは口をきかずに引きこもっていたからだ。そうして、宿に泊まっているあいだじゅう、金袋から金貨を取り出しては繰り返し繰り返し数えるだけだった。黄金の輝きは宿の窓を通して見えた。

「旦那様方、」ある日宿屋のおかみさんが言った、「それほどお金持ちで、みんなの難儀を助けることができなさるのに、施しをしなさらんとはどういうわけですか?」

「立派なおかみさん、」一人が答えた、「私たちは正直な貧乏人というものに施しをしたくはなかったのでしてな、貧民を装った者に騙されはせぬかと。困っている人たちにこの部屋の扉を叩かせなさい、そうすれば私たちは扉を開けましょう。」

裕福な旅行者二人が気前よく金貨を恵んでくれる、翌日そういう噂が広まると、部屋には人の群れが押し寄せた。しかし、出てきた人々の様子は、それぞれ大きく異なっていた。得意そうな者もあれば、恥じ入った顔の者もあった。

この二人の商人は、悪魔のために魂を買い付けていたのだ。年寄りの魂の価は金貨二十枚で、それ以上はびた一文出なかった。サタンがあらかじめ時間をとってその値打ちを決めてあったからだ。亭主持ちの女の魂は金貨五十枚、ただし見目よき場合で、醜ければ百枚。うら若き乙女の魂にはとんでもない高値をつけた。みずみずしく穢れない花がもっとも高価なものなのだ。

さてその頃、町にはキャスリーン・オシェイ伯爵夫人という美しい天使のような方が住んでいた。人々から崇拝され、貧乏人にとっては神様であった。悪しき者どもが人々の困窮につけいり神のものである魂を盗んでいることを知ると、彼女は執事を呼んだ。

「パトリック、」彼女は執事に尋ねた、「私の金倉には金貨が何枚ありますか?」

「十万枚ございます。」

「宝石は?」

「金貨と同じだけの値がございます。」

「城と森と農地で、いくらになりますか?」

「他のものの二倍でございます。」

「よろしい、パトリック。金貨のほかは全て売りなさい。そうして勘定書を持ってきなさい。この屋敷と周りの土地だけ残しておけばよろしい。」

その二日後に敬虔なキャスリーンの命令が実行され、富はその困窮の度合いに応じて貧者に分け与えられた。伝説によると、これは悪魔の目論見に沿うものではなかった。買うべき魂がなくなってしまったからである。そこで恥知らずな召使いに手引きさせて、彼らはこの気高い夫人の侘び住まいへと入り込み、残りの富を奪った。彼女は力の限り金倉の中身を守ろうとしたが、無駄だった。悪魔の盗人の方が強かったのだ。もしキャスリーンが十字を切ることができたら(と伝説は付け加えているが)、そやつらを追い払えただろう、しかし両手の自由を奪われていたのだ。強盗の目的は果たされた。

そうなると、財産を強奪されたキャスリーンに貧民が施しを求めても、哀しいかな、何の役にも立たなかった。彼女はもはや彼らの難儀を救うことができなかった。そうして彼らが悪魔に誘惑されるままにしなければならなかったのである。

一方、西国から穀物など食糧が豊富に届くまで、あとたった八日待つだけだった。しかしこの八日はたいそう長かった。餓えた人々を救うには、八日間で莫大な金額を必要とした。だから、貧しい者は餓えに苦しんで死ぬか、福音の有難い言葉に背いて魂を、全能なる神の寛大な御手より授かったこの上なく貴重なものを、卑しむべき金銭と引き替えに売るかだった。それでもキャスリーンには何もなかった。不幸な人たちのために自分の屋敷を手放してしまったからだ。彼女は十二時間のあいだ涙に暮れ、嘆き悲しみ、陽の色をした髪をかきむしり胸を打ったが、その胸は百合のように白かった。その後彼女は立ち上がり、覚悟を決めて、強烈な捨て鉢の気持ちで行動に出た。

彼女は魂を扱う商人のところへ行ったのだ。

「何の御用で?」彼らは言った。

「あなた方は魂を買うのですね?」

「左様で、だがまだ少のうございますな、あなた様のおかげで。そうではございませんか?サファイアの瞳の聖女様。」

「今日、私はあなた方と取引をしに来たのです、」彼女は言い返した。

「何のお取引で?」

「売りたい魂があるのですが、値が張りますよ。」

「それほど高価とは、どういうわけでございましょうな。魂はダイヤモンドと同じく、その透明度で値踏みをするものでございまして。」

「私の魂です。」

サタンの手代二人は驚いた。その長い爪を革手袋の中で握りしめ、灰色の目を光らせた。純粋無垢で穢れなきキャスリーンの魂!――値のつけようがない掘り出し物だ。

「麗しい伯爵夫人、いかほど御入り用で?」

「十五万枚の金貨を。」

「かしこまりました、」商人たちは答え、黒い封印つきの羊皮紙をキャスリーンに差し出し、彼女は震えながらそれにサインをした。

言っただけの金額が数えられ彼女に渡された。

家に戻るとすぐに彼女は執事に言いつけた、「さあ、これを配りなさい。お前に渡すこの金貨で貧しき者たちは残る八日を乗り切ることができます。一人の魂も悪魔の手に渡ることはないでしょう。」

そのあと彼女は部屋に閉じこもり、誰も自分の邪魔をしないようにと命じた。

三日過ぎた。彼女は誰も呼ばず、部屋からも出なかった。

扉を開けると、彼女は冷たく硬くなっていた。嘆きと悲しみのあまり死んだのだ。

しかしこの売買契約は、その慈悲の心が崇高であったため、主によって無効とされた。彼女は同朋を永遠の死から救ったのだから。

八日が過ぎて、夥しい数の船が餓えたアイルランドに供給物資の穀物を運んできた。もはや餓えの心配はなかった。例の商人たちはといえば、宿屋から姿を消して、どうなったか誰にもわからない。しかしブラックウォーター川の漁師たちは、そやつらはルシファーの命令で地下の牢獄に鎖でつながれているのだと言う。彼らの手を逃れたキャスリーンの魂を引き渡すことができるまで。


Irish Folk Stories and Fairy Tales,
ed. by William Butler Yeats (1865-1939)


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