Monthly Special * February 2003
 Ben Jonson

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The Grace of Simplicity


Still to be neat, still to be drest,
As you were going to a feast;
Still to be powdered, still perfumed:
Lady, it is to be presumed,
Though Art's hid causes are not found,
All is not sweet, all is not sound.

Give me a look, give me a face,
That makes simplicity a grace;
Robes loosely flowing, hair as free:
Such sweet neglect more taketh me,
Than all the adulteries of Art;
They strike mine eyes, but not my heart.



*


シンプルな美を


いつも隙なく、いつもドレスアップして、
まるで フォーマルなパーティーに 出るみたいに、
いつもメイクをきめて、いつも香水ただよわせて。
だけど お嬢さん、考えてもごらん、
技巧は最高 細工のあとさえ見えないからって、
いつも素敵ってわけじゃなし、完璧だってことでもない。

シンプルでそれが美しい、
そんな姿を見せてよ、そんな顔を見せてよ、
ゆったり流したドレスに、髪もゆるりと。
そういう気取らない素敵さに 僕は参ってしまう、
あの手この手の技巧より。
そんなのは 見た目だけ、僕の心には 届かない。



*


 

Ben Jonson (1572-1637)

Jonson については、February 2001 を参照のこと。


'The Grace of Simplicity'
喜劇 Epicene, or The Silent Woman (1609年初演)より。(Epicene の綴りが原題と異なっているのは、もとの綴りには画面で表示できない文字が含まれているため。)


Though Art's hid causes are not found ・・・
「技巧のあとが見えない」のが最高の技巧なのだが、しかし、だからといってそれが必ずしも人の心に訴えるとは限らない。手を加えない、自然な気取らない美しさが人の心をとらえることもある。


当時の女性ファッションは、ドレスもヘアも、今から見れば「ごてごて」「きゅうくつ」。程度の差はあれ身体を締め付ける衣服から女性が解放されるのは、20世紀も進んでから。髪も、「ちゃんとした」女性はまとめ髪が長い間の常識であった。

21世紀の今日、何でもアリの時代に、一つのスタイルに「右へならえ」するのはなぜか止まらないように見える。たとえ「ルーズ系」であっても、「それでなくては」というのでは、やはり「きゅうくつ」。



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