MONTHLY SPECIAL * December 2003 (2)
 Charles Dickens

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A CHRISTMAS CAROL


I CARE not for Spring; on his fickle wing
Let the blossoms and buds be borne:
He woos them amain with his treacherous rain,
And he scatters them ere the morn.
An inconstant elf, he knows not himself,
Nor his own changing mind an hour,
He'll smile in your face, and, with wry grimace,
He'll wither your youngest flower.

Let the Summer sun to his bright home run,
He shall never be sought by me;
When he's dimmed by a cloud I can laugh aloud,
And care not how sulky he be!
For his darling child is the madness wild
That sports in fierce fever's train;
And when love is too strong, it don't last long,
As many have found to their pain.

A mild harvest night, by the tranquil light
Of the modest and gentle moon,
Has a far sweeter sheen, for me, I ween,
Than the broad and unblushing noon.
But every leaf awakens my grief,
As it lieth beneath the tree;
So let Autumn air be never so fair,
It by no means agrees with me.

But my song I troll out, for CHRISTMAS stout,
The hearty, the true, and the bold;
A bumper I drain, and with might and main
Give three cheers for this Christmas old!
We'll usher him in with a merry din
That shall gladden his joyous heart,
And we'll keep him up, while there's bite or sup,
And in fellowship good, we'll part.

In his fine honest pride, he scorns to hide,
One jot of his hard-weather scars;
They're no disgrace, for there's much the same trace
On the cheeks of our bravest tars.
Then again I sing 'till the roof doth ring,
And it echoes from wall to wall--
To the stout old wight, fair welcome to-night,
As the King of the Seasons all!










クリスマスの歌


春ってやつは好きじゃない。移り気な翼に乗って
花や蕾をふくらます。
二心ある雨降らせ 精だし口説いたその花を
朝が来ぬまに 散らして落とす。
気まぐれ妖精、己を知らぬ
一刻ごとの心変わりも。
人の顔見てにっこりすれば すぐにひねくれ しかめ面、
咲いたばかりの花しぼませる。

夏のお日様 急がば急げ輝く家路、
恋しがったりするものか。
ひとひらの雲に翳れば それでこちらは大笑い、
お日様のふくれ面など知らぬこと!
なにせその愛してやまぬ御子様は 手のつけられぬ『熱中』で
燃え上がる『熱狂』様のお供について 戯れ回る。
強すぎる愛は永くはもたぬもの、
大勢が 痛みをもって知るように。

おとなしい実りの夜は、ひかえめでやさしい月の
静かな光に照らされて、
ずっと感じがよさげに見える、
恥じらいも遠慮も知らぬ昼よりも。
とはいえ 木の根につもりゆく
枯れ葉の一枚一枚が 心に哀しみ呼び起こす。
それゆえ秋は さほどに綺麗でなくてよい、
私の性には合わぬから。

さあ声あげて 歌うたおう。頼もしいやつクリスマス、
心あたたか誠実で どっしり構えた彼のため。
満杯のグラスを干して、力一杯元気よく
万歳三唱 我が旧き友クリスマス!
ようこそお入り、楽しい声で
その心さらに陽気になるように。
ともに過ごそう、食べて飲む物ある限り、
別れとなれば、しっかり友情確かめて。

あっぱれに誇りは高く、我が友は 雨風に打たれた傷を
隠そうなどとは露ほども。
けっして恥ずべきものじゃない、
その傷は 勇ましい水夫の頬にはつきものだ。
さあまた歌を 屋根までひびき
壁から壁に こだまするまで――
この夕べ さあ似つかわしい歓迎を、
頼もしい我が旧き友 季節の王を迎えよう!







Charles Dickens (1812-1860)

Dickens については Christmas Issue 2000 を参照のこと。

有名なクリスマスブックスの同名の小説ではなく、The Pickwick Papers 中の挿入歌(第28章)である。イブの夜、陽気な老紳士 Mr. Wardle が、クリスマスの到来を祝して歌う。その親類友人使用人がそろったパーティーで、主人公 Mr. Pickwick とその友人たちも客として楽しんでいる。

この詩は季節をそれぞれ人間にたとえ、クリスマスが一番だと締めくくる。深い意味があるわけではなく、調子の良い言葉とリズムでクリスマスを讃える歌である。奇数行で行間韻を踏んでいる。


The Pickwick Papers (1836-37) は、Dickens の小説第1号にして彼の出世作である。それまでに発表していたスケッチに使ったペンネーム『Boz』の名で分冊出版された。当初の企画では有名な画家 Seymour の絵に添える文章を書くことになっていた。スケッチふう短編で評価されてはいたものの、Dickens もまだ駆け出しの作家だったのである。

ところが第2分冊が出版される前に Seymour が急死し、その仕事は若い Browne (Phiz) に引き継がれた。それで企画の主導権は Dickens に移り、彼の彼らしさが発揮されるようになった結果だろう、第5分冊からは熱狂的にうけるようになった。

『ピクウィック・クラブ』に宛てた Mr. Pickwick 一行の旅行見聞報告という体裁になっている。(善良な独身紳士 Mr. Pickwick は引退した実業家で、このクラブの会長である。) 彼らは行く先々で珍事件に巻き込まれ、それが笑いの元でもある。(もっとも、今の基準からすれば、彼らの『冒険』も『笑い』もテンポが遅く感じられるだろう。) また、一行が旅する田舎の風景は古き良きイギリスの幸福感に満ちている。

その全体としてユーモラスで明るい雰囲気の中に、暗い短編物語が数編挿入されている。異常な心理が描かれたり陰惨な展開であったりするものがほとんどで、まるで本編の陽気さとバランスを取るかのようである。しかしこれらの短編の方が読んで面白いと思うのは、異文化のユーモアを解することは難しいということだろうか。

上記の短編のうち4編が『ディケンズ短編集』(岩波文庫)に収められています。

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