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レポート 300302
レポート課題: 名作を『009』に応用せよ
標題: 幸福の王子 (Another Happy Prince)
提出者: 島村 涼

街を見下ろす高い柱の上に、『幸福の王子』の像が立っておりました。身体は金箔に輝き、目はサファイヤ、剣の柄には真っ赤なルビーがはめ込まれておりました。

人々は『幸福の王子』を見て、口々に褒めそやしました。「なんて美しいのでしょう。」

母親たちは、困った子供に言いました。「『幸福の王子』様のように、おりこうになさい!」

打ちひしがれた男はため息をつきました。「この世に幸せなヤツがいるってのは、いいことだな。」

慈善学校の生徒たちは、夢に出てくる天使様のようだと思いました。

ある日、一羽のツバメがこの街に飛んできました。常夏のエジプトに帰っていく途中で、一休みしようと思ったのです。ツバメは王子様の足元で一夜を過ごすことにしました。

けれど、ツバメは夜中に目を覚ましました。王子様が泣いていたからです。「どうしてですか? あなたはこんなにも幸せなのに。」

「幸せそうに、見えるか?」王子様は言いました。「私のこの身体は悲しみに満ちあふれているのに。」

ツバメは不思議に思いました。

「ずっと向こうの路地に、」王子様は低い声で話し始めました。「路地にみすぼらしい家があって、窓が開いている。そこに、やつれ細ったお針子が、疲れ切って、それでも仕事を続けているのが、私には見える。その子供は病気で、しかし川の水以外、与えるものさえないのだ。

「ツバメよ、お願いだ。私のこのルビーを、あのお針子に届けておくれ。私はここに縛られていて、行ってやることができないのだから。」

ツバメは引き受けました。夜の街を飛び、その窓にたどり着きました。

お針子は仕事机に突っ伏して眠っておりました。ツバメはその指ぬきのそばにルビーをそっと落とすと、熱で苦しそうな子供の額に、翼で風を送ってやりました。

「ああ、いい気持ち。」子供はやっとまどろみました。

その次の夜、王子様は言いました。「若く希望に燃えた劇作家が、寒さで凍えている。今度は私のこのサファイヤの瞳を。」

ツバメはためらいましたが、王子様は説き伏せました。

若い劇作家は、サファイヤを見つけて、熱心なファンがこっそりと送ってくれたのだと思ったのですけれど。

そのまた次の夜、ツバメは広場で泣いているマッチ売りの少女に、王子様のもう一つのサファイヤの瞳を届けました。売り物のマッチをみんな溝に落としてしまったのでした。

「きれいなガラス玉!」少女は笑って、家に走って帰りました。

「さあ、ツバメよ、エジプトにお帰り。」王子様は言いましたが、ツバメは覚悟を決めました。目が見えなくなった王子様とずっと一緒にいることにしたのです。

そうして、王子様の言いつけにしたがって、王子様の身体から金箔をはがしては貧しい人たちに配り、飛び回りました。

おかげで、飢えた子供たちもパンを食べて元気になりました。

やがて、寒さが厳しくなってきました。ツバメはもう飛ぶことができません。王子様は、金箔が全部剥がれて、すっかりみすぼらしくなっておりました。

「さようなら。」 ある夜、ツバメは王子様の唇に口づけすると、その足元に落ちて死んでしまいました。その瞬間、王子様の鉛の心臓はまっぷたつに裂けてしまいました。それほど寒い夜だったのです。

朝になって、街の人々は『幸福の王子』を見上げ、口々にけなしました。「おやまあ、なんてみっともないこと。」

町のお偉方は意見を述べました。「もはや浮浪者と変わらぬ有様である。」

「美ならぬもの有益にあらず。」美術教授は断言しました。

『幸福の王子』は柱のてっぺんから降ろされ、炉に入れて溶かされました。

けれど、裂けた鉛の心臓は、どうしても溶けませんでした。しかたがないので、職人はそれをゴミの山に投げ込みました。そこにはちょうど、ツバメの亡骸も捨てられておりました。



「例のものを回収してまいれ。」神様が大天使の一人に命じました。

大天使は地上に向かうと、ゴミの山に降り立ちました。そうして、王子様の鉛の心臓とツバメの亡骸を胸に抱いて戻りました。

神様はそこから魂を取り出しました。「さて、この魂をまた送り出さねばならぬ。次の身体のデザインはできておるのか?」

設計を司る大天使が、神様の前に企画書を広げました。

「うむ、よろしい。長い栗色の前髪も、悪くない。」

元話: Oscar Wilde, The Happy Prince (19世紀イギリス)



審査員: 明らかな手抜きだ。

提出者: えっと・・・あの、だからその、Oscar Wilde の術にはまってですね、涙が止まらなくて、もおダメだったんです〜。

審査員: それは昔からわかってるだろう。

 

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