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児雷也/クリックで拡大

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合巻(ごうかん)・歌舞伎など



児雷也(じらいや): 児来也、自来也とも。美形の妖術使い。術を駆使して権力に立ち向かうアイドル義賊。

綱手(つなて): 16才の美少女妖術使い。剣の達人、百貫目の岩をも投げ飛ばす力を持つ。



室町の世に活躍する怪盗・児雷也の本名は尾形周馬寛行(おがたしゅうまひろゆき)。肥後の豪族の遺児で、お家再興のために資金を集めている。

諸国を歩くうちに越後にやって来た児雷也は、仙素道人の弟子となり、妖術を学ぶ。蝦蟇(がま)や大鷲などを操り、それらを乗り物としたり、虹に乗ったり、変身する術を身につけた。

大鷲に乗って現れ、危機一髪の救出を果たすなどして飛び去るのがお馴染みのシーン。

児雷也の師仙素道人は、数百年を経た蝦蟇の精。児雷也の術は『蝦蟇の妖術』で、師の仇敵でもある大蛇丸(おろちまる)に蛇の術で封じられてしまった。

そこで活躍するのが、綱手。華奢な美少女だが、越中の蛞蝓(かつゆ)仙人のもとで修行した女武芸者である。蛞蝓すなわちナメクジの妖術で大蛇丸を抑え、児雷也を助ける。そして、妖賊大蛇丸一味を倒すべく、ともに闘うのであった。

カエル>ナメクジ、ナメクジ>ヘビ、ヘビ>カエル。この三者の力関係が、『三すくみ』。それはいいとして。ほんとうに、ヘビに飲まれたナメクジはヘビを溶かしてしまうのだろうか。



中国の盗賊『我来也』の説話に着想を得た物語が、19世紀初め頃に読本(よみほん)になった。それをもとにした勧善懲悪の長編が、合巻(ごうかん)として幕末から明治初年にかけて出版された(未完)。その間に、河竹黙阿弥が歌舞伎の題材として、19世紀中頃に初演。その後、初期の映画にも取り上げられ、民衆のヒーローとして人気を保ち続けた。

強い。美しい。術は使うが人は殺さない。金持ちからしか盗まない。悪を懲らしめる。幕末から明治にかけての不透明な時代に、庶民はこの美形アイドルヒーローに喝采を送ったのである。――はい。もうこれ以上申し上げることはございません。文句なしに似合うと思いますです。



☆ イラスト中のタイトルは、「じらいやごうけつものがたり」と読みます。(歌舞伎のタイトル)

☆ 合巻: 江戸時代後期に生まれたビジュアルなストーリーブック。それまで1つの物語が分冊形式で出版されていたのを、数巻合体して1冊に製本するようになったので、「合巻」。



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