Monthly Special * August 2008
 Edward Thomas

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THE PATH


Running along a bank, a parapet
That saves from the precipitous wood below
The level road, there is a path. It serves
Children for looking down the long smooth steep,
Between the legs of beech and yew, to where
A fallen tree checks the sight: while men and women
Content themselves with the road and what they see
Over the bank, and what the children tell.
The path, winding like silver, trickles on,
Bordered and even invaded by thinnest moss
That tries to cover roots and crumbling chalk
With gold, olive, and emerald, but in vain.
The children wear it. They have flattened the bank
On top, and silvered it between the moss
With the current of their feet, year after year.
But the road is houseless, and leads not to school.
To see a child is rare there, and the eye
Has but the road, the wood that overhangs
And underyawns it, and the path that looks
As if it led on to some legendary
Or fancied place where men have wished to go
And stay; till, sudden, it ends where the wood ends.



*****


小  道


土手に 小道がついている
土手は 下の急斜面の森から
道路を守る壁だ。
そこから 子供たちは 深くて滑らかな崖を見下ろす、
ブナやイチイの脚を透かして、でも
倒木があって 見えない。大人たちは
満足している、道路と、土手越しに見えるものと、
子供たちの言うことに。
小道は、銀のように 曲がりくねって、細々と続き、
ごく薄いコケが 小道を縁取り あるいは侵略しつつある、
木の根や 崩れた白亜を 覆おうとしている
金色オリーブ色エメラルド色で、でも できない。
子供たちが磨り減らす。土手の頂を平らにし、
コケの間を銀色にする
足の流れが、来る年も来る年も。
でも、道路沿いに家はない、学校へ行く道でもない。
そこで子供を見るのはまれで、目に入るのは
ただ 道路と、森、おおいかぶさり
下に広がる、そして 小道、 まるで
どこか伝説の 空想の 場所に続いているみたいな
人が 行ってみたい そこにいたいと 思うような。
でも、突然、小道は終わる 森の終わるところで。



Edward Thomas (1878-1917)


伝記や地誌的な作品を書いていたが、30歳を過ぎてから Robert Frost のすすめで本格的に詩を書き始めた。第一次大戦中フランスで戦死。1920年に Collected Poems が出された。

時代的にはジョージ朝の詩人に分類されるが、作品は現代詩に通じると評価される。イギリスの田園風景の愛着に満ちた正確な描写が特徴。


日本であれば、峠道はたいてい片側が急な深い崖になっているが、この道はどんなところを通っているのだろう。崖の反対側については、何も書いてない。平地が続いているのなら道を崖っぷちに造る理由はないので、やはりお馴染みの山道なのだろうか。

土手は、雨で道が削られないよう、また通行人の転落防止のために築かれたはずで、だから森になった急斜面の区間にだけ造られている。


大人と子供の態度が対比されているが、それはあまり重要ではない。大人の好奇心のなさは、大人が土手には上らないことを印象づける役割が大きいと思う。

確かに子供は土手に上るが、それでもそんなに子供がよく通る場所ではない。それなのに、コケは磨り減り小道がついてしまう。――そんな不思議さへつなげる前提条件なのではないだろうか。

それならいったい、土手の上の小道は、誰の仕業なのだろう? そう思いながらたどっていくと、ぷっつりと土手は途切れる。

その小道を歩いてきた子供も、そこでフッと消えてしまうかのように。



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