Monthly Special * October 2007
 
Charles Tennyson-Turner

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ON THE ECLIPSE OF THE MOON OF OCTOBER 1865


One little noise of life remain'd--I heard
The train pause in the distance, then rush by,
Brawling and hushing, like some busy fly
That murmurs and then settles; nothing stirr'd
Beside. The shadow of our travelling earth
Hung on the silver moon, which mutely went
Through that grand process, without token sent,
Or any sign to call a gazer forth,
Had I not chanced to see; dumb was the vault
Of heaven, and dumb the fields--no zephyr swept
The forest walks, or through the coppice crept;
Nor other sound the stillness did assault,
Save that faint-brawling railway's move and halt;
So perfect was the silence Nature kept.





月  蝕


生あるものの かすかな音がひとつ 残っていた――聞こえてきた、
遠くで汽車が停まり それから 走り過ぎるのが、
ごうごうと鳴っては 静まりかえり、せわしない蝿が
ぶんぶんいっては 止まるのに似て。ほかに
動くものはない。行き行く地球の影が
銀の月にかかった、月は 黙って
その大いなる移ろいを進める、見る者をいざなう
何のしるし 何の合図もなしに。
もしも たまたま目にしなければ。だんまりの天空、
だんまりの野原――西風は
森の道を 駆け抜けず、雑木の茂みを 這いもせず。
ほかの物音ひとつ 静けさを破ることなく、
ただ あの動いては停まる かすかな汽車の音だけ。
それほどに 自然は 黙りこんでいた。






Charles Tennyson-Turner (1808-79)

Charles Tennyson-Turner については、November 2005 を参照のこと。


たまたま目撃した月蝕。しかし、書かれているのは「静けさ」であって、月蝕の事細かな描写はない。そのことがかえって月蝕の不思議な印象を強めているようだ。

地球の影に覆われる月に遠慮するかのように、地上の自然は静まりかえっている。ただ人工物であり自然の管轄外である汽車の音だけが、意に介さずにいるかのようだ。

最初、どことなく宮沢賢治の童話の雰囲気に似ているように感じた。また、なぜか詩人は低い丘の上に立っているような気がしたのだが、遠くの汽車の音がよく聞こえそうな場所だからだろうか。



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