Monthly Special * November 2006
 Thomas Hood

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I Remember, I Remember



I remember, I remember
The house where I was born,
The little window where the sun
Came peeping in at morn;
He never came a wink too soon
Nor brought too long a day;
But now, I often wish the night
Had borne my breath away.

I remember, I remember
The roses, red and white,
The violets, and the lily-cups--
Those flowers made of light!
The lilacs where the robin built,
And where my brother set
The laburnum on his birth-day,--
The tree is living yet!

I remember, I remember
The fir trees dark and high;
I used to think their slender tops
Where close against the sky:
It was a childish ignorance,
But now 'tis little joy
To know I'm farther off from Heaven
Than when I was a boy.



*****



想い出す


想い出す、想い出す
僕の生まれた家、
小さな窓、朝、お日様が
のぞき見するみたいに入ってきた。
一瞬でも早く来て欲しかったのに。
昼間をのばして欲しかったのに。
だけど今は、よく思う。夜が
僕の息の根を止めてくれてたらよかったのにと。

想い出す、想い出す
バラの花、赤いの白いの、
スミレにスズラン――
光でできた そんな花たち。
コマドリが巣をかけたライラック、
それから、兄が誕生日に
キングサリの木を植えた場所――
その木は今も生きているのに。

想い出す、想い出す
よくブランコをこいだ場所、
そうして思った、風が勢いよくぶつかって
飛んでるツバメもこんなに違いないと。
僕の心には羽根が生えて 翔んでいた
今はとても重くて、
夏の池で泳いでも
額の熱がとれそうにないのに。

想い出す、想い出す
モミの木、黒々と高い。
前には思っていた、ほっそりした梢は
空につきそうなんだと。
子供じみた無知だったけど、
でも今は嬉しくもない
子供の頃より
天から遠いのだと知って。




Thomas Hood (1799-1845)

Londonn 生まれ。1821年から23年まで The London Magazine の副編集長を務め、Lamb や Hazlitt、De Quincey らと知り合う。その後、順次様々な雑誌を編集した。ユーモラスな中にヒューマニズムが感じられる作品が知られている。

現在はマイナーな詩人と見られるようだが、19世紀には人気があったらしく、F. T. Palgrave (0824-97) によるアンソロジー The Golden Treasury of Songs and Lyrics (1861; second series, 1896) には Wordsworth や Tennyson と並んで2編ほど選ばれている。


子供の頃は朝が来るのが待ち遠しく、夜などやって来て欲しくなかった。しかし今では夜のうちに死んでしまっていたらよかったのにとさえ思う。それほど憂鬱らしい。

確かに子供には子供の悩みがあり、生きていたくないと思う時だってあるけれど、それは大人になってみれば大して深刻なものではない・・・だろうか?

その時々で、いつも新しい悩みは最大に感じられるのではないだろうか。だから、子供の頃は元気一色だったとするのは、いかがなものかと思う。美化しているのでなければ、忘れているのかも。

それに対して、ある人の記憶も縁のものも現存しているのにその人がいない、そんな時のぽっかり開いた穴のような感覚は、よくわかる。

「天から遠い」のは、次のどちらだろう?
(1)「神から遠い」つまり大人は堕落している
(2)「死から遠い」人生に嫌気がさしているのになかなか死ねない

子供の頃と比べて「遠い」のだから、やっぱり (1) ということなのだろう。



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