Monthly Special * March 2005
 Alfred Edward Housman

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Loveliest of Trees, the Cherry Now


Loveliest of trees, the cherry now
Is hung with bloom along the bough,
And stands about the woodland ride
Wearing white for Eastertide.

Now, of my threescore years and ten,
Twenty will not come again,
And take from seventy springs a score,
It only leaves me fifty more.

And since to look at things in bloom
Fifty springs are little room,
About the woodlands I will go
To see the cherry hung with snow.







桜 桃


木のなかで とりわけ素敵な、桜桃は今
枝じゅうに 花いっぱい、
森の乗馬道のかたわらで
復活祭季節の 白色をまとう。

さて、人生七十年、
二十年がもはや還らず、
七十回の春から 二十をひけば、
五十回が残るのみ。

花咲く木々を眺める春が
五十回では少ないから、
森へ 行こう
雪いっぱいの 桜桃の木を見に。






Alfred Edward Housman (1859-1936)

Cambridge大学のラテン語教授。古典学者。発表された3冊の詩集は、言葉数を抑えたシンプルな表現が評価されている。


cherry: イギリスではふつう桜桃(さくらんぼ)で、その花は白い。

Eastertide: 復活祭の季節。復活祭後 Whitsunday(聖霊降臨祭)までの7週間(期間はこのほか宗派により異なる)。この期間、教会では白が用いられるそうだ。

threescore years and ten: 70年。聖書より。詩篇90-10 「われらのよわいは七十年にすぎません。/あるいは健やかであっても八十年でしょう。/しかしその一生はただ、ほねおりと悩みであって、/その過ぎゆくことは速く、われらは飛び去るのです。」


昔の人は「人生五十年」だったのだと思っていたが、「人生七十年」とは、聖書の時代の人はずいぶん長生き。

ところで、20才に「50年」はどんなふうに感じられるだろう。私個人としては、当時親が契約していた金融商品の「10年満期」「掛け金10年払い」など聞くと、10年後は遙か遠い先の不確かなことのように思われ、「50年」となれば、もうどれくらい長いのか想像がつかなかった。

そうした実感を踏まえて言えば、やはりこの詩を書いた Housman は、やはりそれほど若くはない。(最初の詩集 A Shropshire Lad は 1896年に出版されている。)

白い花盛りの桜桃を見られるのも回数が限られているなら、同じく白い、雪を載せた桜桃の木を見て回数を稼ごう。感情50%、理屈50%で書かれた、お洒落なウィットの効いた詩だと思う。



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