Monthly Special * September 2003
 Philip Sidney

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THE BARGAIN


My true love hath my heart, and I have his,
 By just exchange one for another given:
I hold his dear, and mine he cannot miss,
 There never was a better bargain driven:
  My true love hath my heart, and I have his.

His heart in me keeps him and me in one,
 My heart in him his thoughts and senses guides:
He loves my heart, for once it was his own,
 I cherish his because in me it bides:
  My true love hath my heart, and I have his.



*



素敵な取引


愛する彼は 私の心を、私は 彼の心を、

  心と心 とりかえて。

私は 彼の愛しい心をしっかりと、彼は 私の心を放さない。

  こんな素敵な取引、これまでにない。

    愛する彼は 私の心を、私は 彼の心を。



私の中で 彼の心は 二人を一つにするし、

  彼の中で 私の心が 彼の考え気持ちを動かす。

彼は 私の心を愛してくれる、前には彼のものだったから、

  私は 彼の心を大切に、私の中に住んでいるから。

    愛する彼は 私の心を、私は 彼の心を。



*



Philip Sidney (1554-86)

Sir Philip Sidney はルネサンスの典型的ヒーローである。エリザベス女王の宮廷で輝く名門貴族、詩人であると同時に他の詩人のパトロンであり、戦場においては勇敢な武人であった。

その格好良さは、スペインとの戦いにおいて自ら致命傷を負いながら、自分が飲もうとした水を重傷の兵士に譲ったエピソードによく現れている。

シドニーは美しい詩を作り、また、『小説』という形式が確立していない時代に散文でフィクションを書いた。しかし、彼の名が文学史上で重要なのは、詩論『詩の弁護』 An Apologie for Poetrie (または The Defence of Poesie )を著したことによる。

当時盛んになった詩や演劇などの文学は、宗教的立場から「有害」であるときびしく攻撃された。文壇の人々はそれに反撃したが、中でもシドニーの『詩の弁護』(死後出版された)は後の時代にまで影響を与えたとして評価されている。



恋愛を「心の交換・やり取り」とするのは、いかにも宮廷ふう恋愛、知的でお洒落な感覚。「戯れの恋」「恋愛ゲーム」。 「本気」はやぼったいのかも。



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