Monthly Special * July 2002
 Jonathan Swift

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A Description of the Morning


Now hardly here and there a Hackney-Coach
Appearing, show'd the Ruddy Morn's Approacch.
Now Betty from her Master's Bed had flown,
And softly stole to discompose her own.
The Slipshod 'Prentice from his Master's Dore,
Had par'd the Dirt, and sprinkled round the Floor.
Now Moll had whirl'd her Mop with dext'rous Airs,
Prepar'd to scrub the Entry and the Stairs.
The youth with Broomy Stumps began to trace
The Kennel Edge, where Wheels had worn the Place.
The Smallcoal-Man was heard with Cadence deep,
Till drown'd in shriller Notes of Chimney-sweep.
Duns at his Lordship's Gate began to meet,
And Brickdust Moll had scream'd through half the Street.
The Turn-key now his Flock returning sees,
Duly let out a'Nights to steal for Fees.
The watchful Bayliffs take their silent Stands;
And School-boys lag with Satchels in their Hands.


***





さあ 騒々しく貸し馬車が あちらこちらに
現れて、赤ら顔した朝も近いと 教えてくれた。
さあ ベティは ご主人様の寝床を飛び出して、
そっとこっそり忍び足 自分の夜具を乱しに行った。
だらしなさげな見習い小僧 親方宅の玄関の ドアから
泥を削り取り、あたりの床にまき散らかした。
さあ モルは 器用にモップを振り回し、
戸口と階段 こする支度を。
ちびた箒で 若いのが
浚いはじめた、どぶの縁 車輪で減ったそのあたり。
クズ石炭を売り歩く 男の野太い声がして、
そのうちに 煙突掃除の子供らのふるえる声に かき消えた。
お客様閣下の御門のその前に 集まりはじめる 集金人、
みがき粉売りの男へと 通り半分むこうまで モルは 金切り声をかけ。
牢番は 預かる群れが戻るのを見る、
正当に お手当稼ぎをするために 夜は放免されていた。
夜っぴて起きてた執行吏 だんまり居眠り 部署に着き、
手に鞄持った生徒は ぐずぐず歩き。


 

Jonathan Swift (1667 - 1745)

アイルランドのダブリンに生まる。イングランドに渡り、政治家 Sir William Temple の秘書として働く。政界入りのチャンスを待つが、結局かなえられず、最終的には聖職者としてアイルランドに帰った。

生涯を通じ、数多くのパンフレットを発行して、「諷刺」を武器に、政治・宗教・学問など様々な分野の問題に鋭く切り込んだ。また、トーリー党の定期刊行物 The Examiner の編集者としても活躍した。

しかし、彼の政治的著作は政党の考え方よりも「常識」に基づくものであるといわれる。誰もが「それはひどい」と感じるであろうことに対して、とくにアイルランドに関わる問題では、痛烈な諷刺で批判した。

たとえば、彼はイギリス政府が鋳造しアイルランドに使用させようとした低品質の半ペニー銅貨の導入に反対し、The Drapier's Letters 『ドレイピア書簡』 (1724) を書いて、この政策を撤回させることに成功した。

意地悪で皮肉な、人間不信の風刺作家の正体は、[正義と人道の人]であったらしい。

なお、Swift の著作はほとんど全て匿名で出版されたため、彼が支払いを受けたのは、ただ1作 Gulliver's Travels 『ガリバー旅行記』についてだけ (200 ポンド)だったという。



この詩は、1709年4月に雑誌 The Tatler に掲載された。この頃 Swift は、ロンドン生活のシーンを描いた詩をいくつか発表している。

常識でいえば、朝の清々しさを予測させるタイトル。だが、その内容は、それとは正反対の、今日もまた繰り広げられる、どうしようもない人間の営みである。もちろん、[朝=清々しい]というお約束ごとのパロディである。

「朝? 現実はこんなもんでっしゃろ、特に都会では。」 そういう意地悪な Swift の視線が感じられる。田園詩とは逆の向きから、都市生活を批判しているようでもある。

夜は、通常、闇・悪・死などネガティブなものに結びつけられる。しかし、夜のうちは、見たくないようなことは、闇に紛れてはっきりとは見えない。

朝は、夜から人間が解放される時で、光・希望・生が感じられるものとされる。一般に待ち望まれるものである。だが、その朝がやってくると、人間の愚行も再開されるし、汚さも惨めさも堕落も全部見えてしまう。Swift の好みそうな皮肉である。



Hackney-Coach: 6人乗り、2頭立て4輪の貸し馬車。この場合は、[朝帰り]に使われているのだろう。

The Youth 〜 Place: 清掃ではなく、古釘などを集めて売るためにどぶ浚いをしている。

The Turn-key 〜 Fees: 牢番が囚人を夜の間外に出し、盗みをさせていた。自分が彼らから取り立てる牢内での雑費にあてさせるためである。お約束では、'Flock' といえば、[羊飼いの集める羊の群れ]なのだろうが。



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