Monthly Special * January 2002
 Rudyard Kipling

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Cities and Thrones and Powers


Cities and Thrones and Powers
 Stand in Time's eye,
Almost as long as flowers,
 Which daily die:
But, as new buds put forth
 To glad new men,
Out of the spent and unconsidered Earth
 The Cities rise again.


This season's Daffodil,
 She never hears
What change, what chance, what chill,
 Cut down last year's;
But with bold countenance,
 And knowledge small,
Esteems her seven day's continuance
 To be perpetual.


So Time that is O'er-kind
 To all that be,
Ordains us e'en as blind,
 As bold as she:
That in our very death,
 And burial sure,
Shadow to shadow, well persuaded, saith,
 "See how our works endure!"




 



都市も王も国も



都市も王も国も
 『時』の眼には、
日ごとに枯れる
 花と変わらぬ永さ。
されど、新たな蕾が開き
 新たな人を悦ばすごとく、
疲れ切り顧みられぬ大地から
 都市はまたそびえ立つもの。

この季節の水仙
 それは決して聞くことがない
いかなる変化、いかなる偶然、いかなる寒気が
 去年の花を倒伏せしめたかを。
ただ 大胆に取り澄まし、
 物をも知らず、
己の七日の花時
<はなどき>
 永遠なるものに思う。

そこで ありとあらゆる存在に
 やさしさ余る『時』は、
我々に 水仙のごとく何をも見ず
 大胆であれと 運命づける。
『時』は我々の死に際し、
 まさに埋葬のとき、
影に影、しかと確信して言うのだ、
 「見よ、我らのなした業
<わざ>が どれ程永らえるかを。」

 

Rudyard Kipling (1865 - 1936)

フルネームは Joseph Rudyard Kipling だが、本人は Joseph の名を使わなかった。

いわゆる在印イギリス人の子供として、植民地インドのボンベイに生まれる。6才の時に、教育を受けるために渡英。1882年にインドに戻り、 1889年にインドを離れるまで、新聞記者・編集者として働くかたわら、詩や小説を書く。

インドを舞台とした詩や短編小説で本国においても成功、一躍流行作家となる。1907年にはノーベル文学賞を受賞。

第1次世界大戦後は、帝国主義的要素とあくまでも法の側に立とうとする態度によって知識人の反感を買い、重要視されなくなった。しかし、20世紀の終わりに近づくにつれて再評価が進んだ。日本では『ジャングル・ブック』や『象の鼻はなぜ長い』などの児童文学で知られている。


'Cities and Thrones and Powers' は、Puck of Pook's Hill の各章頭につけられている詩の一つ。花にとっては永遠にも等しい7日間の存在期間は、人間から見ればたったの7日間だが、しかしその人間の存在とて、永遠の『時』の中ではほんの一瞬の時間である。

Kipling は、「だから人間には何もできない、あきらめろ」と言うのではない。今年の花が終わってもまた来年の花が咲くように、一つの都市が滅びても、また別の都市が作られ繁栄する。自分の時間を見つめ、自分の時間でできる限りのことをせよ、それは永遠の『時』の一部となるのだ、と言う。

法すなわち秩序を尊重した Kipling はまた、個人に対して社会の一員たる義務を負い努力することを求めたが、その背景には当時の大英帝国が存在した。しかし、この詩に込められた人間あてのメッセージは、時代やその思想が変わっても通じるものであろう。



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