MONTHLY SPECIAL * October 2000
 John Keats

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TO AUTUMN


T

Season of mists and mellow fruitfulness,
 Close bosom-friend of the maturing sun;
Conspiring wit him how to load and bless
 With fruit the vines that round the thatch-eaves run;
To bend with apples the moss'd cottage-trees,
 And fill all fruit with ripeness to the core;
  To swell the gourd, and plump the hazel shells
 With a sweet kernel; to set budding more,
And still more, later flowers for the bees,
Until they think warm days will never cease,
  For Summer has o'er-brimm'd their clammy cells.

U

Who hath not seen thee oft amid thy store?
 Sometimes whoever seeks abroad may find
Thee sitting careless on a granary floor,
 Thy hair soft-lifted by the winnowing wind;
Or on a half-reap'd furrow sound asleep,
 Drows'd with the fume of poppies, while thy look
  Spares the next swath and all its twined flowers:
And sometimes like a gleaner thou dost keep
 Steady thy laden head across a brook;
 Or by a cyder-press, with patient look,
  Thou watchest the last oozing hours by hours.

V

Where are the songs of Spring?  Ay, where are they?
 Think not of them, thou hast thy music too, ---
While barred clouds bloom the soft-dying day,
 And touch the stubble-plains with rosy hue;
Then in a wailful choir the small gnats mourn
 Among the river sallows, borne aloft
  Or sinking as the light wind lives or dies;
And full-grown lambs loud bleat from hilly bourn;
Hedge-crickets sing; and now with treble soft
The red-breast whistles from a garden-croft;
 And gathering swallows twitter in the skies.



*** ***

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秋によせて

T

霧と甘い実りの季節、
成熟を促す太陽の 腹心の友よ;
汝は太陽と相謀る、藁葺き屋根の軒を這う
葡萄の蔓に どのように実を成らせ 祝福するかを;
賤家の苔むした木々を いかに林檎の実でたわませるか、
また 全ての果実をその芯まで熟れさせるかを;
瓢箪をふくらませ、
  はしばみの殻を甘い実で丸くする術
(すべ)を;
蜜蜂のために 遅咲きの花にもっと蕾を
さらに蕾をつけさせる法を、
夏がその湿潤な巣穴に蜜を溢れさせたのだから
温暖な日々は決して終わらないと 蜜蜂が思うほど。

U

収穫物の只中に汝の姿を見たことのない者があろうか。
戸外で姿を求める者は誰でも 汝を見つけるだろう
ときには 吹き乱す風に髪をそっとなびかせて
穀物倉の床に 一息ついて坐っているのを;
あるいは刈りかけの畝で ぐっすり眠っているのを、
罌粟
(ケシ)の香気に誘われて 汝の鎌が
次の列を それに巻き付く花ごとそっくり刈り残したままで:
そして ときには 落ち穂拾い人のように
小川を渡りつつ 荷を載せた頭をしゃんともたげているのを
あるいは林檎絞り器の傍らで 辛抱強く
いつまでも 最後の一滴まで見守っているのを。

V

春の歌はどこへ行ったのか。そう、今どこに?
だが気に留めずにおこう。
  汝にも汝の音楽があるのだから---
すじ雲が おだやかに逝く日を色づけ
刈り株畑を薔薇色に染める
その時、小さなブヨが悲しげに声を合わせ
  嘆きの羽音をたてるのだから、
川の柳の間を
かすかな風の生死につれて 高く低く揺られながら;
丸々とした羊たちは 丘の辺りで震える声を張り上げ、
生け垣の蟋蟀が歌い、庭先では やわらかな高音で
駒鳥が笛をひびかせ
空には群れ集う燕が 囀り交わしているのだから。



*** ***


John Keats (1795-1821)

Londonの貸し馬車屋の子供として生まれる。外科医になるべく医学を学ぶが、自然や古典の美の世界に開眼、詩人としての自分を自覚する。1816年に最初の詩集を出版してから、結核により26才で短い生涯を閉じるまで、今日に残る情熱的で美しい作品を書き続けた。

To AutumunのTでは様々な収穫物に触覚的・味覚的に感じられる秋が、Uでは収穫作業をする人間の姿として視覚的にとらえた秋が表現される。Vで描かれるのは、聴覚にうったえる秋である。

これら様々な感覚で詠われた秋をTからVに読み進むと、1日のうちの時間の移り変わりと同時に、秋が深まる様子が描写されていることがわかる。

豊穣の秋、労働の秋。しかし、Vには"soft-dying", "mourn", "dies"など、<死>にまつわる語句がちりばめられ、実りの秋のすぐ後には冬が待っていることが示される。そもそもすでにUにおいて、その眠りとの関係から<死>を連想させる"poppies"が、そして"the last oozings" (最後の一滴)という、どこか命の終わりを感じさせる表現が使われているのである。

この詩には、直接色を表す言葉は"rosy"(と駒鳥の"red-breast")しか使われていないが、全体に溢れる<秋の色>が、大変に美しい。リンゴの赤、葡萄色、黄色っぽい瓜類、はしばみ色、蜂蜜の色、麦畑の黄金色、夕焼け空の複雑微妙な茜色。そこに羊の白、ツバメの黒などが点々とアクセントになっている。

この豪華な暖色系の配色は、やがて来る冬(=死)の前の、秋の最後の一瞬の輝きのように見える。この詩がKeatsの死の1年ほど前に書かれたものと聞けば、尚更である。


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