MONTHLY SPECIAL * April 2000
 William Butler Yeats

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The Lake Isle of Innisfree

I will arise and go now, and go to Innisfree,
And a small cabin build there, of clay and wattles made:
Nine bean-rows will I have there, a hive for the honey-bee,
And live alone in the bee-loud glade.

And I shall have some peace there, for peace comes dropping slow,
Dropping from the veils of the morning to where the cricket sings;
There midnight's all a glimmer, and noon a purple glow,
And evening full of the linnet's wings.

I will arise and go now, for always night and day
I hear lake water lapping with low sounds by the shore;
While I stand on the roadway, or on the pavement grey,
I hear it in the deep heart's core.



*** ***


インニスフリーの湖島


今こそ我は立ちて行かん、 インニスフリーへと、
その地にささやかなる小屋を建てん、粘土と編み枝をもちて。
九畝の豆を植えん、蜜蜂の巣箱を置かん、
蜂の羽音高き林間の空地に 独り住まわん。

そこで我は安らぎを得るであろう、安らぎはゆるりと降り来るものゆえ、
朝のヴェールより蟋蟀の鳴く処へと 降り来るものゆえ。
その地では 夜は一面の煌めき、昼は真紅の輝き、
そうして 夕は鶸(ひわ)の翼のはためき。

今こそ我は立ちて行かん、昼も夜も
やわらかなる音を立て あの岸に湖水の打ち寄せるが 我には聞こえるゆえ。
車道にあるいは灰色の舗道に立ちながら、
湖水の波音を 心の奥底に 我は聞くゆえ。



*** ***


William Butler Yeats (1865-1939)

詩人・劇作家。1923年ノーベル文学賞受賞。

アイルランドのダブリンに生まれる。はじめは美術を志すが、神話や超自然に興味を抱くようになり、21才の時に文学に方向転換した。

イェイツは、1887年にロンドンに出てきて象徴派の詩人達と交わった。初期には故国アイルランドの風土や伝説の世界を反映したロマン主義を特色としていたが、後期、特に1920年代、「人間」を象徴的手法で描く現代詩人へと、大きく変化した。

1890年代のアイルランド文芸復興運動を盛り上げたナショナリストであり、自ら中心となってアイルランド国民文学座を創設している。

この詩は1890年、ロンドンで書かれた。街中でふと耳にした噴水の水音から思い起こした、故国の湖の島への郷愁をうたったものとされる。

 "the roadway" と "the pavement grey" の言葉が無機的な都会を代表している。現代の都市生活者には、わかりすぎるほどわかる心情ではないだろうか。そしてまた "now" とは思いながら、故郷には「すぐには帰れない」ことも。 


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